俺には何のドラマもなかった

 これまで、岡山県大佐町(現在の新見市)の大佐山をスタート会場としてきた、JMRC中国・四国ラリーシリーズの最終戦「チェリッシュつちの子ラリー」は、初めてそのスタート・ゴール会場を移しての開催となった。
 とは言え、大幅な変更ではなく、合併により広くなった、新見市の東部から西部に位置する神郷温泉へと移動したのだが、これまでに大佐から神郷へと向かうルート設定がされていたこともあり、大まかにいえばこれまでのルートを逆にしたような形だ。
 ただし、このラリーの名物となっていた、大佐山ヒルクライムが無くなった事は残念だ。
 しかしそこは、見せるラリースト田口盛一郎が設定するとあって、ゴール会場にいるサービス員にも観戦できるSSはしっかりと設定されていた。
 最終戦を迎えて、チャンピオン争いを持ち越しているのは、CクラスとBクラスで、それぞれ次のような展開になっていた。
 まずBクラスは、松井繁往がリーダーで最終戦を迎えたが、仕事でどうしても参加できずに、他人頼みとなる。また3番手の山岡信雄も参加できずに、2番手の細川勝司と4番手の松原久とのマッチレースとなった。
 しかし、松原には優勝しか残されておらず、しかも細川が4位以下でなければならないが、一方の細川もプレッシャーのあまりリタイアでもすれば、松井を逆転できない微妙なポジションに立っている。
 Cクラスは堀川竜二、上野耕二、手塚清明、白神祥男の4人のチャンピオン候補が勢揃いした。
 この中に渡部洋三の名前が無いのが寂しい限りだが、今シーズンはノーポイントの渡部がクラスの最後付近での出走となるため、このクラスに波乱が起こることも十分に予想された。
 ともあれ、リーダーの堀川から上野、手塚まで23ポイントしか差が無く、優勝したものがチャンピオンとなる、シリーズを締めくくる絶好の最終戦となった。



 チャンピオン候補達はスロースターターなのか、SS1とSS2を山本剛が最速で駆け抜け、SS3で白神、SS4とSS5を堀川が奪いセクション1を終えた。この時点でのオーダーは、堀川、上野、渡部、手塚と白神という並びでセクション2にアタックする。セクション2に入って、まず上野に駆動系トラブルが発生し、2番手のポジションすら危うくなり、手塚はフライングを宣告され、白神はTCへの早着で万事休す。結局、「僕には何のドラマもなかった」と語る堀川が優勝し、Cクラス移籍後の初優勝のシーズンにシリーズまで制してしまった。2位には優勝してシリーズ入賞を目論んだ渡部だったが、堀川に見事なまでにうっちゃられた。3位には手塚が入り、好調な出だしをきった山本が4位に入った。


優勝 堀川 竜二/岡田 誠

2位 渡部 洋三/池田 茂

3位 手塚 清明/斉藤 哲史



 SS1とSS2は、細川への刺客である金子泰淳が取ったが、コドラの武田友己が老獪ぶりを発揮し、SS3とSS4で細川がスーパーラップを連発し、この時点で20秒ものアヘッドを築いた。その後、SS6、SS7、SS8でもトップタイムをマークした細川が、ブーンの4駆で舗装に苦しむ松原を尻目にプレッシャーに打ち勝ち、初の栄誉を獲得した。2位には4ヶ所でトップタイムをマークしたが、勝負所をしっかりと抑えた細川に敗れた金子が入り、3位には何故か野村浩司が入った。


優勝 細川 勝司/武田 友巳

2位 金子 泰淳/岡 政人

3位 野村 浩司/横山 英治




 前戦でチャンピオンを決めた安藤恭平は、コドラがオフィシャルに回ったため不参加となり、速水直樹と日高隆紀との間でシリーズ2位の座をかけた戦いが展開されたが、速水が全てのSSを制する完全優勝でシリーズ2位の座を勝ち取った。


優勝 速水 直樹/梶山 剛

2位 日高 隆紀/室下 英康




 3連勝で既にチャンピオンを決めた山口英明だったが、後半で4連続ベストを出したにもかかわらず、昨年のこのラリーで初優勝を飾った作田拓大が、序盤で築いたマージンを生かして開幕戦に続き最終戦もしっかりと優勝で締めくくった。2位には、作田に敗れて連勝を止められた山口が入り、3位には助手席の漢字が異様な雰囲気を醸し出す山徳隆志が入った。


優勝 作田 拓大/吉田 ゆき

2位 山口 英明/谷 正史

2位 山徳 隆志/池内 (兄)


取材記事協力:


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